オフィス鴻

スタートアップと運送事業

2023年03月29日

内閣府が実施した「戦略的イノベーション創造プログラム」の実証実験事業者で、ダイナミックプライシングをベースとしたAIでの料金評価(運賃)システム開発準備をしているスタートアップ企業が紹介されています(2023年3月15日付日本経済新聞朝刊15面参照)。

ダイナミックプライシングは運送事業経営の重要な選択肢の1つでありますが、この記事に違和感を覚えるのは、取引データが荷主と運送会社の仲介行為(水屋)だけであることに加えて、AIが「最高」「推奨」「最低」の運賃に分類・区分して、荷主との運賃交渉は運送会社自身が行う仕組みを考えていることです。アメリカのFlowspace社では、貨物の在庫状況の確認、貨物の出発・到着、倉庫間移動などのトラッキングがリアルタイムで行えるそうですが、デジタル化が遅れている日本の運送業界への新システム導入支援により「運送会社の収益性向上とドライバーの賃金向上の後押しをしたい」という高尚な理念には頭が下がります。

実際、日本国内での現実を見渡すと、長時間の荷卸待ち解消となる自動荷積・荷卸ができる拠点はまだ殆どありません。また、特に越境B to Cが盛んになるとB to B作業を含めたニッチ業務市場を支える中小物流事業者(少ロット、非機械化、非システム化)の負担がさらに増えると予測しています。現在でもパレット規格の共通化・適正管理すら十分にできていない日本で、荷物が運べないことが現実(販売機会損失、委託先の撤退など)とならないよう、中間流通全体での共通プラットフォーム構築(「Traffics Core System」と呼ぶ仕組み作り)と、その仕組みを労働集約型産業(サービス提供事業)へと活用して未来社会の活性化に役立てるという「夢」をぜひ実現したい思っています。