オフィス鴻

トランコム社のMBO

2024年11月22日

今年9月、東証プライムのトランコム社がファンドと創業者によるMBO(経営陣が参加する買収)により経営の自由度を高めると発表しました。同社は車両マッチング事業が主力ですが、最近は物価高等によるBtoB物量の減少や利用運送事業(中抜き;水屋とも呼ばれます)への批判もあってか、業績の低迷が続いていたことも要因としてあるようです。編集人もKindle電子書籍で「運送2024年問題」に対する私見を述べていますが、実際に協力業者への下払い運賃は上昇する一方ですが、荷主側への値上げ交渉が難航しているのが運送業界全体の体感でしょう。特にDX導入により物流プロセスを見直すことで現在よりも物流費総額を減少させたいと考える荷主や、他にも仕事を受けてくれる運送会社はたくさんあるとして値上げに殆ど応じない荷主も実在するのが現状です。

編集人が社外顧問を務める中堅物流事業者では2年で10%以上の値上げを容認しない荷主から完全撤退しましたが、新たな運送会社は「安かろう悪かろう」でトラブルが頻発している様子で、取引先からのクレームが絶えないと聞き及んでいます。その背景には、荷主側の物流(購買)担当者が運送業務の実態を知らないことが殆どで、撤退する側との信頼関係が無いので当然なのですが、運送業者を切り替える時の引継ぎは契約の範囲内でしか行われないのが普通です。また、新規参入してきた運送事業者は「こんなことは契約時に聞いていない」とこれまでの納品先への無償サービスを断るため、荷主の取引にも大きく影響してしまうことに気付いても後の祭りになるのです。仕方なく、自社配送に切り替えても却ってコスト増になったという話は多く耳にします。

なお、トランコムのマッチング数は有価証券報告書等から読み取る限り1日約5~6千件と推測していますが、編集人の経験値では1日1人当たりのスポット成約数は数十~百件程度です。逆算すれば500名以上の人員が必要で昨今の運賃相場を見れば当然の選択だと思います。