オフィス鴻

ヤマト運輸と日本郵政

2024年12月25日

ヤマトホールディングス(ヤマト運輸)と日本郵政が小型薄型貨物での協業関係を解消することになりそうです。敢えて「解消」としなかったのは、今後両社間での訴訟合戦に発展する可能性もあり、現段階ではヤマト側から日本郵政側に一部連携中止を申し入れた段階との判断によるものです。協業内容はヤマトが集荷してきた貨物の配送を日本郵便に委託するものでしたが、中止理由はともかくとして物流業者同士の競合がいかに難しいのか、また閑散期に物量確保のため値下げ合戦を繰り広げる運送業界特有の悪しき慣習が表面化したと考えるのが妥当でしょう。

現在、大手メーカーを中心にトラックの共同利用が盛んに検討されていますが、➀自車貨物が運搬できなくなる、②双方のめりと分の分配方法で意見が異なる、③製造工程まで遡ると協力会社(トラック以外の仕入れ先を含む)との関係性に影響が出る、など解決すべき課題は山積しています。特に宅配便・路線便(特積)事業者は同じようなサービスメニューがラインアップされており、日本全国で隈なく配送網を維持するためには閑散期の貨物量確保、繁忙期の配送拠点のキャパシティオーバーといった、事業の根幹に関わる課題を解決する必要があります。そこにAmazon社がビジネス上の商機として、販売社を含めたITインフラ・プラットフォーム化を推進してきたことで競争が激化している構図です。

これまでもメール便(信書)を巡って総務省と郵便法による日本郵政独占に風穴を開けてきたことを鑑みれば、越船同舟(競争相手同士でも利害関係が一致することで協力する)が簡単に運ばないと物流関係者は思っていたと感じます。結果的に、幹線輸送便の積載率低下(ここが収益性に関する大きなポイントです)を防ぐためにヤマト運輸は何度も法人向け価格の値下げを行ってきました。そして、昨年2月には人手不足の折、あろうことか全国2万人のクロネコメイト(小型貨物専門の配達方式で、殆どが業務委託方式を採用)との契約を解除したのです。