オフィス鴻

ライドシェアの需要

2024年06月10日

今年4月からタクシー事業者が管理を担う形で、地域・時間等が限定された日本版のライドシェアが紆余曲折を経て解禁されました。編集人の住む首都圏では特定の時間帯(週末の夜間、早朝、通院時間帯、乗務員の出勤が少ない日祝など)、都県境(営業区域)、大雨・大雪・台風等の気象条件、鉄道の運行停止時など以外ではアプリで呼ぶことは難しくありません。逆説的に言えば、そのような特殊な状況下以外で自家用車を選択する利用者需要について、きちんと検証されているかが普及のポイントになると考えています。

また、地方の観光地でタクシーが少ないところでは、個人タクシー等の乗務可能年齢制限を引き上げたり、季節的要因(例えば北海道のスキー客)で他地域から限定的に車両・乗務員を異動させる、行政側の移動手段を用意するなど以外にも、宿泊施設による送迎や時間帯にもよりますが公共交通機関がある場合も多く、同じく需給関係のバランスがとれるのかが普及の大きな要因になるでしょう。その他、行政によっても異なりますが概ねタクシー認可料金の8割程度(諸経費含む)、または時間給が収入となりますので、海外の公共交通機関と比較しても定時運行率が極めて高い日本で爆発的に需要が拡大するとは考えずらいでしょう。もう一つ、本業がありその隙間で副業としてライドシェアを行う場合、運送事業法に依る拘束時間管理は非常に煩雑であり、また社会保険・労災保険・割増賃金を本業(企業勤務者)と共有して扱う必要があることは、あまり知られていません。

首都圏でタクシーが不足している本当の原因は、ドライバー不足(低賃金)とタクシー数の政策的台数制限ですから、この点に触れずに特に降車地(自宅付近)の個人情報管理が十分に機能していないと思わぬトラブルに見舞われる可能性も十分考えられます。また、10年間同一事業者に所属して無事故無違反であり、法令・地理試験等に合格すれば個人タクシーとして独立開業できますが、営業区域内の個人タクシー台数には制限があり廃業者の順番待ちといった側面もあるのです。