オフィス鴻

ルールを変えること

2024年02月28日

九州のとある大手バス会社が経団連に加盟するような有名大企業並みの賃金UP(5%程度)が出来ない代わりに、退職金の前払い方式(毎月の給料に1~2万円程度を上乗せ)を1つの選択肢として導入したそうです。既に、1990年代後半に前払制度を導入した企業はありますが、運送業界(トラック・バス・タクシー)では退職金制度さえない中小企業も多く、また人材の入れ替えが激しいことからある程度の効果は見込めるように思います。

その要因として、ドライバー職応募は仕事内容や福利厚生より目先の手取賃金(いわゆる生活給)を基準に転職先を選ぶ傾向があるためです。長期的な視点に立てば退職金には税制優遇がありますが、毎月の給与に上乗せ支給すれば標準報酬が最低1~2ランク上がるため税金・社会保険料負担額が増えます。賞与であれば多少負担増は軽減されますが、課税対象であることには変わりありません。実際には入社後すぐに離職していくドライバーも多く、その原因は賃金よりも仕事に対する勝手な思い込み(採用担当者の資質や人間性にもよります)や人間関係によるものが多数を占めていることは事実です。

その一方で、菅前総理がTV番組等で盛んにライドシェアを全国同水準で進めるべきとの持論を展開しています。そのためには、これまでの法規制(道路運送法、旅客運送事業法、労働基準法など)を1から見直す必要が生じる以外にも、新しいビジネスモデルとするには共通のプラットフォーム構築、安全対策ツール整備、料金体系(メーター設置義務、違反行為者の免許取り消しなど)も盛り込まれていくべきだと考えています。また、旅行代理店事業・晴れ着レンタル業者・美容・労働者派遣業などの倒産事例を見れば、万が一の補償は最終的に国が行わなくても済むような仕組みを整備した上での消費者保護(自己責任論はまた別の問題)の重要性もより議論されるべきでしょう。それと、労働時間規制の観点から職業ドライバーは除外する規程や、社会保険料負担割合の点から勤務先への労働時間申告を義務付けるなどの課題も残りますね。