オフィス鴻

交通渋滞による損失

2025年01月20日

日々の経済活動の中で都市部での通勤時間と交通渋滞は、認識が変わりつつある研究分野です。長時間通勤は片道2時間を超えることも屡々であり、往復で4~5時間が非生産活動として消費されています。実際、通勤時間途中でPCを使って仕事をしている方も居ますが、QOLの1つとして居住地での充実度を高めたいと考える方もいるようです。また、リモートワークという働き方も認識され、働き方の選択肢も拡がってきました。なお、通勤時間に関する損失額は不明ですが、総務省統計局の資料では日本人の平均往復通勤時間は平均 1時間19分、年間約350時間との調査結果があります。ただ、東京近郊では往復2時間程度の通勤は普通ですから、日本の課題とされる労働生産性を高めていく上での障害になっていることも事実でしょう。

また、内閣府の試算によれば2024年度の実質GDPは約560兆円、交通渋滞による経済損失は日本全体で年間12兆円(出典は忘れました)との試算があります。その分野を横断的視点から「渋滞学」として学問領域にしたのが西成活裕氏で、東京大学のHPに掲載されています。ここで渋滞による損失を取り上げたのは、同氏が「日本の物流は効率化が進んあちこちで業務が渋滞しているため、その解決には科学的に物流の効率化を考えられる人材の育成が必要である。」と述べられている点にあります。同氏によれば、警察と協働して高速道路での自然渋滞メカニズムを数学的に解いたことで、走行中の車がみな車間距離を40mに保つだけで渋滞が解消されるという研究結果がその後「渋滞学」が世の中で認められる大きな転換点だったそうです。

生まれて初めて歩く都会(渋谷)の雑踏を見て、「数学の研究は社会課題の解決とは距離が遠いが研究を社会の役に立てたかった。」との一心で「大好きな数学や物理で、大嫌いな渋滞を解消する」という試みだったと言います。今でこそ認知されている研究領域であり、これからの物流効率化に大きな効果が期待できそうです。