オフィス鴻

低温物流の進化

2024年11月23日

日本経済新聞の1面に「低温物流網に大型投資」という記事が掲載されていました。最近、編集人のところにも投資会社やコンサル会社から低温物流の現状と将来性についての問い合わせが多く、前職企業との守秘義務の関係で取引先や倉庫形態等の具体的な情報は提供できませんが、業界団体や国土交通省のHPなどの資料から一般論としてお話させて頂いています。特に某冷凍食品メーカーの物流体制や、M&A(C&F社の争奪戦)に関連していると思われる物流事業者の比較などが主なのですが、最も深刻なのはコールドチェーン全体で冷凍・冷蔵温度帯に対応できる倉庫がほぼ満庫状態であることだと言われています。日本の食のスタイルが変わりつつある中で、家庭用・外食用共に調理を必要としないレトルト食品等の需要が伸びていることが背景にあると思われます。

また、低温物流に不可欠な冷凍・冷蔵倉庫自体が既に老朽化による建て替え時期に入っていること、その倉庫では温暖化の原因となる特定フロンが使われていること、一度低温設備が故障すると普及時間次第ですが保存商品にダメージを与える可能性が高いことなどが、多くの投資会社やデベロッパーによる大型倉庫建設建設を後押ししている構図が見て取れます。その他にも低温庫内作業員には厳しい労働法が適用されており省人化が必要なことや、低温対応のトラック価格・人件費上昇に見合った適正値上げが浸透していない(背景にはBtoB物量の減少傾向があります)ため、必要なトラックを集められないと言った複合的な要因が重なっているのが現状だと認識しています。

先程のC&F社に関するM&Aでは、当初TOBを提案した企業の2倍以上で他社の傘下に入りましたが、その理由として比較的新設大型倉庫が全国にあり、メンテナンス力が高いことがDDでの評価を高くしたと考えられています。また2030年までに代替フロン・自然冷媒への転換が義務付けられているため、時間軸から逆算した現在が投資決定のタイミングだと言えるでしょう。