オフィス鴻

労働力不足の事業

2025年12月02日

編集人の専門領域である中間流通分野には、昨今のIT化・DX導入・生成AIなどが進みずらい事業領域がたくさんあります。その中でも特に深刻だと思われるのは物流業界と飲食業界ではないでしょうか。この2つの業界を横断するビジネスとして自動販売機業界が挙げられます。端的に言うと飲料販売と配荷(商品補充等)を行っているもので、自動販売機が単独インフラ(販売情報は除く)として機能していない点が労働集約的産業であると言えます。また電源のある設置場所獲得も過当競争であり、地主(設置者)への手数料(マージン)負担も少なくないのが現状だと考えられます。

また自販機ベンダーは定価販売という高利益体質であったものの、一方で高コスト体質を改善するには人件費の壁が高く、同時に大手への寡占化が進み購買特性を備えた競合他社(コンビニ等)も多く存在しています。今から40年程前には運送業界に於ける自販機補充ビジネスは固定費+出来高制が多く、当時の給料は50万円を超えることも珍しくありませんでした。もう1つは消費者の節約志向が水筒などを持参することに繋がり、自動販売機を利用する頻度が減少していることが挙げられます。編集人も普段は水筒に水などを入れて、急場以外は飲料を購入しなくなりました。

最近は自動販売機であごだし(出汁)やデザート、総菜などが売られている光景も良く見かけるようになりましたが、1商品あたりの単価は飲料より遥かに高い500~1,000円前後に設定されています。変わり種では宝飾品(数万円)のチケットを販売している自動販売機もあり、そこには閉店時の無人オペレーションとして明確な導入理由があることも事実です。この価格帯ならば補充・回収等に係る人件費をカバーすることは容易に可能ですし、広域オペレーションも必要ありません。そのように考えると、自動販売機ビジネスもこれから大きな変革期に突入したと感じています。