オフィス鴻

医薬品配送の実情

2025年07月10日

難病患者を含め医薬品がいつでも手に入れられる日本の医療制度は非常に有難いと感じています。編集人の場合1日20錠近くの服薬(種類は12)をする必要がありますが、掛かり付け薬局でも在庫がない場合があります。おそらくほとんどの薬局では医薬品卸会社と取引しており、調剤待ちの時間でも納品来ていることを見かけます。しかしジェネリック医薬品の製造・供給に問題が発生したことで、先述のような在庫切れが発生しているのも事実です。編集人の場合は1週間程度は常に予備薬を所持しており、在庫切れの場合は後日薬局からメール便等で自宅まで配送して頂くようにしています。

ここで医薬品配送に係る流通コストを厚生労働省と青山学院大学のチームが調査した資料を見てみました。その理由の1つには編集人が30歳代の頃に商社で医薬品の中間流通(編集人の専門分野です)を研究したことがあったからです。当該調査資料によれば、①基礎的医薬品(医療現場で必要性が高いもの)のコスト比率は107%、②抗生物質・麻酔薬等のコスト比率は105%、③安定確保医薬品のコスト比率は103%となっており、簡単に言えば赤字配送が常態化している実態が浮かび上がります。実際に医薬品流通に於いては未だに製薬会社から販売数量等に応じたリベートが払い戻される商慣習があり、流通の不透明さが残っています。

さらに調査では赤字要因として薬価の低さ・在庫切れへの対応・特殊な保存が必要な薬剤・緊急発注などが挙げられています。首都圏ではドミナント配送が可能ですが、全国には中山間地・離島等もあり更に収益を圧迫する要因になるとも指摘されています。日本が世界に誇る健康保険制度ですがこのような課題を解決するにはメニュー・プライシングの導入が効果的です。しかし全国一律料金を維持しようとすれば、どこかに必ずしわ寄せが来ます。安定供給されないと困るのは日本国民であると改めて認識させられた調査でした。