オフィス鴻

多重下請(利用運送)

2024年06月03日

政府は「運送2024年問題(主にドライバー不足)」への対応策として、物流二法(物流総合効率化法・貨物自動車運送事業法)の改正により元請け事業者に取引管理簿の作成・保存(1年間)を義務付ける方針を固めました。目的は契約内容を明確にして下請事業者側の利益確保によりトラックドライバーの賃上げを促すとありますが、その他にも荷主企業に対して荷待ち時間短縮の計画作成を義務づけるなど、運送業界だけではこの難題を解決できないと判断したものと想定されます。一方で、多重下請を悪者と見做すなら、利用運送事業(口銭・手数料の収受)の現状と今後のあり方も同時に議論の俎上に載せるべきだと思われます。

既に多くの製造メーカーが異業種間での共同配送を始めて車両稼働効率・積載効率向上を図る取り組みをしていますが、その中でも重量品(飲料など)と軽量品(紙製品・食品など)の混載共同輸送は以前から行われています。特に障害となるのは、輸送エリア(面)が工場・物流拠点によって効率化を除外する要因になること、商品特性により荷崩れを防止するための緩衝材等が必要なケースが多いこと、中長距離輸送でコスト面・環境面で優れている鉄道コンテナ輸送が天候・災害に対して運休となるなどの脆弱性が高いこと、そして作業時間短縮に不可欠なパレットの統一化が遅れていることなどが挙げられます。

当然荷主企業も営業部門の要望(急な納品変更、決算期直前の押し込み納品など)と需要予測に基づいて生産しますから、最終ラインである運送部門にイレギュラーが発生することは否めません。最近では物流DX導入などが盛んにコンサル企業から提案されていますが、それ以前に運送業界自体の体質が変わらない限り全国で約14百万台ある事業用トラックの総稼働台数が減少して、法定時間外労働減少が実現したとしても、現実には改善基準告示の改定によりそれ以上の時間外労働削減により大幅な収入減少が運送事業者で起きています。働き方改革の方向性は正しいと思いますが、収入減がドライバー不足を加速化している現状を鑑みれば、まだまだ検討するべきことは多いと感じます。