実運送体制管理簿
2025年07月24日
最近、編集人の元に実運送事業者の経営改善に関する問い合わせ、アドバイス依頼が増えています。特に多重下請構造による経営不振や一次下請け事業者の乗務員離職問題などに関する相談が多く、今後どのような方向性で経営を進めるのが良いのかといった点にフォーカスされているように感じます。編集人の結論からすれば、全ては運送料金に関する決めごとを契約書として書面化すること、運送事業以外の関連分野(倉庫・取扱等)での収益性を上げていくこと、そして最後は経営者が腹を括って判断すべきことであると考えています。従業員の定着率が下がっていくこと、すなわち離職もその延長線上にあると認識することが重要であるということになります。
最近は荷主側にも貨物自動車運送事業法が適用されるようになったことは周知の事実ですが、実際には適正運賃とはかけはなれた料金を提示して来る荷主も少なくありません。また実運送体制管理簿(下請事業者に至るまでの葉中記録の保存等)についても実効性に乏しく、利用運送であれば罰則規定もないことから実際の現場では作成されていないとの発注側の声も聞こえてきます。また運送事業全体に言えることですが管轄陸運支局等の監査でも、事前にバックオフィス部門等が点呼記録等の修正を行うケースを多く見てきました。これらは国の物流改革とは一線を画すものであり言葉を変えれば不正行為に他なりません。
もう1つ表面化していない深刻な課題を運送事業者は抱えています。それは記録簿の改ざんや未整備が未払賃金の温床となるリスクです。実際に運輸支局・労働基準監督署等による監査では勤務記録と運行記録の付け合わせから調査を始めます。残業時間を枠内に収めることは書面上はできますが、ドライバーにとっては収入減少に直結する問題です。またこの問題を公にすることは配車差別(不当労働行為に該当)と表裏一体であり、最終的には経営者と対立する構図が出来上がってしまいます。ここを解決しなければ、本当の意味でのドライバーの働き方改革は実現しないと考えています。