オフィス鴻

水素燃料トラックの開発

2025年12月04日

トヨタグループ傘下の日野自動車が、共同開発の水素を燃料とする燃料電池トラック(FC)を日本国内で初めて発売しました。日野自動車の発表によれば、長距離運行にエネルギー密度の優位性があるとされていて、ある程度のインフラ(水素スタンド)整備が実証事件で可能と判断したとのことです。課題となっていた水素充填時間は30分程度とEV自動車に比べて短縮される見込みではあるものの、価格(未公表)は通常ディーゼルトラックの数倍に相当する1億5,000万円(その他に架装費がかかります)となれば、導入できる貨物運送事業者も自ずと限られてくることでしょう。

実際に車両価格を減価償却(リース)ベースで考えると、1日あたりの車両費は総売上高の50%を超えると試算されますし、水素価格・整備費は公表されていないので採算性については現段階では判断できないと考えています。つまり運送費そのものが現在より3~4割上昇する可能性があり、一般的な運送比率が製品売上高の5%と仮定すれば消費者への販売価格は2~3%前後の物価上昇要因となる計算になるのです。もちろんSDG’sの観点からすれば、長距離トラック輸送が多いヨーロッパや北アメリカなどでの需要はあるものの、価格とインフラ整備がネックになることは容易に想定できます。

しかし日本のハイブリッド車がヨーロッパで見直され電気自動車普及の障害(水没・バッテリー性能等)が明らかになるにつれ、トヨタグループの10~20年先を見据えた技術・販売戦略が新たな日本の強みとなることが考えられます。日本にあるガソリンスタンドは2025年度で27,000か所と減少傾向に歯止めがかからず、EV充電スタンドは同25,000か所、そして水素スタンドは同149か所程度と公表されていますので市販化までには長い道のりがかかりそうです。また国家補助金制度は国際的経済競争公平性の観点から課題も多いものの、非常に着地点が難しそうですね。