物価上昇に占める物流費
2024年07月07日
編集人が最近出版(Kindle版)した「運送2024年問題」はこれから本番を迎えるとの内容を記載した書籍があります。働き方改革によりドライバーの拘束時間が原則年間960時間以内になり、今後運べない貨物が急増するとコメントする有識者もいらっしゃいますが、現時点で運べない貨物が滞留して消費者の手元に届かない事例は編集人の身の回りにはなく、引越時期や繁忙期を中心にトラック運賃が上昇していることを感じている程度です。
参考までにJILS(日本ロジスティクスシステム協会)の調査資料によれば、売上高に占める総物流費の割合は業種による違いはあるにしても5%前後で推移しており、輸送費はそのうちの2~3割程度と推測されています。つまり、商品価格が10~20%と段階的に値上げされてきたのは、殆どが製造原価(原材料費、人件費、光熱費等)に起因するもので、その値上げ率に対して、相対的に物流費が占める割合は少ないというのが適切な見方だと思います。編集人は、この部分に焦点が集中してしまうと物流クライシス解決へのロードマップに対して、消費者が誤った理解をすることを心配しています。具体的には、国土交通省が「物流標準化促進事業費補助金(オープンプラットフォーム構築支援事業)」として共同配送等への実証実験に最大3千万円を公益社団法人流通経済研究所が窓口となって交付することを今年5月に開始しました。編集人は同研究所が主催する海外視察や会合に参加したことがありますが、トラック不足問題の殆どが商慣習に起因することはサプライヤー(製造業)・卸売業側も暗黙の裡に理解していました。
それを1990年の物流二法改正により、景気低迷下での運送事業者の安値受注競争に拍車をかけたことへの報道は少なく、「宅配便クライシス」として消費者に伝わったことが現在の状況を招いたように感じています。ただし、現実としてトラックドライバー不足は続いており、EC物流(業務委託の個人事業主)に関わるドライバー数を加えて考える必要があるでしょう。