物流クライシスの将来
2025年08月01日
日本経済新聞(今年3月)に複数の運送事業者がベトナム等の東南アジア地域に現地拠点の教習施設を作る記事が掲載されていました。編集人は今から5年程前に経営会議で同様の施設を東南アジアと九州に設立する案を提言しましたが、その後難病治療のため第1線を退いたことで後任者がどのようにしていくのか注視していました。結論的に言えば「何もしていない」のが実情の様です。また政府・大手製造業・ITベンダーではDXを活用した取り組みが始まっていますが、最終的にはフィジカルインターネット(複数の企業が保有する倉庫やトラックをシェアリングし、物資を効率的に輸送する取り組み)を中心に長時間労働対策を講じています。
ただしここにある大きな課題は、単純労働力(ドライバー)として数合わせをするだけではサプライチェーンに於ける物流事業者が主体的に社会インフラを支える存在になることは極めて困難だと想定されることです。その理由は外国人労働者の受け入れ要件は緩和されても、その労働者の生活(当然家族も含みます)を豊かにする取り組みには程遠い現状があるからです。編集人の企画では「海外である程度人選を行うこと」「日本に家族を帯同できるスペシャリストを現地で育成すること」「本人の希望があれば、再び出身国で管理者として勤務できる制度を取り入れること」を明確に書いていました。
具体的にはIoT・AI技術を活用するのは人間自身であり、物資・倉庫・車両の空き情報の可視化や規格化などだけでは日本の魅力を発信するには不足していると考えていたからです。現時点では平均年齢が50歳を超えたと言われるドライバー職が物流網を維持していますが、BtoB(企業間物流)は何とか維持できるように思います。しかし消費者行動が変化しない限りは、Amazon社のようにBtoC(宅配)の有料化・料金値上・サブスク化は更に進むでしょう。消費者として利便性向上は歓迎しますが、もっと根本的な人間としての生き方に関連する課題があると考えているのです。