オフィス鴻

米国関税と物流

2025年08月03日

アメリカのトランプ大統領が推し進める国内製造業(ラストベルト)を支援する関税政策に続き、アメリカの造船・海運業界を保護する目的で米通商法301条(不公平な貿易慣行への制裁措置)に基づき自動車運搬船への入港料の徴収、パナマ運河の通航料減免などが検討されています。各国が90日間の猶予期間中にアメリカとの協議を行い中国との相互関税が一部撤廃されていますが、今後の展開はまだ不透明な状況にあります。一方で他国製造業の中ではアメリカ離れも起きていると言いますから、一方的な関税戦争(貿易障壁)は全世界の経済安全保障政策にも大きく影響することが想定されています。

こと物流(海運)に関しては港湾地区での貨物用コンテナ滞留が今後大きな問題となる可能性があること、国際的な運賃指標が下げ局面にあることなどをを考えれば海運会社の収益にも影響が避けられないでしょう。また円安傾向から140円台に入ったことで日本の輸出型産業・消費者物価にもマイナスの影響が出ることが懸念されています。その他にも関税に加えて物流コストが増加することを鑑みれば、物流の混乱が各国の市民生活に悪影響を及ぼすことは容易に想像できます。7月に相互関税15%と80兆円の経済支援が決まりましたが、いずれにしても自分の生活を引き締めていく必要がありそうです。

また総務省統計局の消費者物価指数(CPI)では対前年同月比で3.6%(調整前)の上昇、内閣府の月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料では個人消費の減少・設備投資の減少が課題として提起され、名目賃金(現金給与総額)はフルタイム労働者の定期給与は物価上昇率の高まりによりマイナスになっていると報告されています。そして今後は「2%程度の安定的な物価上昇と、これを持続的に上回る賃金上昇の実現が重要」と締めくくられています。つまり上昇基調にある物流費が消費マインドを更に冷やす危険性があり、就業人員減少の中で着地点・最適解を探る状況だと考えています。