路線バス網の維持
2025年11月15日
日本経済新聞記事からの一部引用になりますが、日本の主要都市(自治体)が路線バス事業者に拠出する補助金が220億円と10年前の2倍に増加しているそうです。さらに国土交通省によれば2023年度の国の拠出金は124億円に上っています。これまでのコラムでも路線バス事業の苦境についてお伝えしてきましたが、補助金頼りの事業運営は公共性と言う重要な観点からも見直す時期に差し掛かっているように感じます。もっとも問題だと感じるのは、料金値上げが行いずらいことと交通弱者への対策でしょう。特に運賃収入が利用者減少になるのかは見極めが必要だと感じます。
もちろん公共交通ですから一定の利便性と経済性は優先されるべきですが、そもそも乗務員不足により度重なる減便を続けてきた結果、大切な利便性が大きく損なわれてきたことも事実です。公営市営共に過去高額であった乗務員の年収を引き下げてきた背景はあるにしても、現在の年収300万円台では乗務員のなり手が極端に減少することは避けられません。そのように考えていくと、将来的にはバス専用レーンを拡大して自動運転化を進める、路線の統廃合よりも再編成を進めて新たな路線開設へと舵を切る、デマンド運行をタクシー会社に委託することなどが考えられます。
もし公共性を第一に掲げるのであれば、公共機関(駅・医療機関・学校など)との接続と繁閑差運行を含めた地域住民との調整が必要でしょう。もう1つは単なる補助金に搭乗客数に応じたインセンティブを付加することで、地域住民がどの程度路線バスを必要としているのかを測定する尺度にもなり得ると考えられます。そして実際に地域住民の乗車が減少するのであれば、他の代替交通手段を検討・導入する理由が明確にできる利点もあるのかも知れません。全ての住民を満足させることなど現実的ではないと理解しているのであれば、料金を含めて実情に見合った方法を模索するべきだと感じます。



