オフィス鴻

軽貨物起業の矛盾

2024年06月08日

軽貨物自動車運送事業を始められ個人事業主となったももの、早々に撤退・廃業を決める方も少なからず存在します。企業に勤めるのとは異なり、青色申告業務や車両購入費・維持費、車両保険料、健康保険料等は全て業務委託収入の中から捻出しますので、もし赤字になったとしても誰からも補填されることはありません。特に業務委託契約では運送事業者に課される労働時間規制は適用されず、また委託元との契約内容によっては、配達ノルマを達成するために長時間労働が常態化する可能性があります。換言すれば、個人事業主は働き方によって収入が増えたり組織に束縛されないメリットが享受できる代償として、貨物運送事業者の過重労働部分をデメリットとして背負うことになります。

特にラストワンマイル(宅配)は、ECビジネスの拡大を追い風に需要に供給が追い付かない状態が長らく続いていて、開業すれば引く手あまたの状態でしょう。しかし、実際にはフリーランスとしての働き方ですから、安定性と収益性を追い求めるためには同業者との差別化が必要となります。また、諸事情(介護、家庭、倒産など)で参入してくるケースも考えられますが、生活できるだけの収入が確保できるかは殆どが配達個数で決まるため、半ば使い捨ての消耗品と同じような立場に置かれているとも言えそうです。そして最大の問題は収入を上げるためには、長時間労働を含めて重大交通事故リスク(国土交通省調査では対昨年比で1.5倍程度)が高いという現実が挙げられます。

つまり、貨物運送事業者が労働時間問題をリスクヘッジして撤退した仕事を個人事業主が異なる法律下で多重下請するという矛盾と、制約が少ないフリーランスとしての働き方のはずが結果的に長時間労働しないと稼げない矛盾が存在していることになるのです。なお編集人が中学生・高校生だった40年以上前、中元時期に百貨店の自転車配達員バイトを試験後の1週間だけ行い、当時1個110円で1日120個程度(同じ家に複数配達できた)と半年分の小遣い稼ぎができました。