運送事業者の倒産
2025年08月04日
物流2024年問題で話題になった運送業界ですが、最近の燃料高騰・人件費高騰・国際物流の停滞・消費低迷などから収益が悪化している事業者も少なくありません。全体の99%が中小事業者と言われる日本の運送業界ですが、値上げの恩恵をあまり受けられない協力業者(下請け業者)の倒産情報をよく聞くようになりました。幸い編集人が顧問を務めている物流事業者で経営危機に陥っている企業はありませんが、単に人手不足倒産ではないところに運送業界特有の課題が透けています。実際に全日本トラック協会の調べでは希望額の運賃値上げを実現できた事業者は20%に留まっており、10%程度は全くまたは殆ど値上げできなかったと言う資料があります。
今後の物流予測で最も運送事業に影響が出るのは、長距離輸送と宅配事業だと編集人は予測しています。長距離便では荷物が少ない閑散期には廻り仕事とよばれる二次請け・三次受けに手を出して、何とか売り上げを確保しようと安値受注する事業者が多くいます。その結果一部のマッチング事業者が発表している運賃指数を鵜呑みにすることはできませんし、結果的に利用運送事業者(水屋・元請け)が多くの利益を享受していることが上場会社の決算報告書を見れば予測できます。単純に考えれば保有車両台数×年間売上高とが乖離している事業者は、この利用運送事業で多くの利益を得ていることになる訳です。
もう1つの宅配事業では大手3社(佐川、ヤマト、日本郵便)の寡占状態にありますが、ここでも運行固定費(拠点間輸送)を賄うために閑散期は協力業者に仕事を出さないケースも少なくありません。そのため通常では考えられないような企業向け運賃が提示されることも多くあります。特にEC物流の増加は宅配業界に一時的な繁忙をもたらしましたが、消費低迷が続く中で配達ドライバーを業務委託方式とすることで人件費の福利厚生部分を削減する動きが止まりません。業務委託ドライバーは目先の売り上げに惹かれますが、諸経費が上がっている現状では廃業する方も増えてくるでしょうね。