運送契約と料金交渉
2024年04月13日
これまで貨物自動車運送事業を中心に、物流2024年問題への対応策をブログで綴ってきました。その中でも、最も重要なのは荷主との運送契約(料金)だと考えています。大手の運送事業者は商社・財閥系、港湾系、電鉄系など、多くの場合長期的で安定した業務量が見込めるベーシックな荷主との取引を中心にしますが、中小の運送事業者は大手が余り手を出さない地場産業などを業務の中心に据えて、ある意味では荷主毎に住み分けて営業活動をしていました。そこに、物流2法改正と佐川急便・ヤマト運輸などが総合物流を掲げて地場産業に営業展開したため、多重下請け化と料金競争に拍車をかけるきっかけになったのだと考えています。
また、正確な数字で示せる資料はなかったのですが、多重下請け(中抜き行為)のうち、完全な水屋(貨物取扱事業)は相当数減少したように感じます。一方で、大手元請けの営業展開による3PL型営業が物流2法改正で新規参入運送事業者が増えた結果、特殊技能・附帯業務を必要としない一般貸し切り運送料金の値下げが低収益性を招く大きな要因になったとも思っています。地縁・血縁・人脈が無い新規運送事業者は、採算度外視でも仕事量を確保して事業継続を図るため、長時間労働により見かけの給料が増える中小事業者にトラック乗務員もある程度は集まっていましたが、今年4月からは労働時間に関する罰則強化に伴い、これまでの収受運賃では事業が継続できない事業者も増加すると考えています。
そうなると、値上げを殆ど認めない荷主からは徐々に運送事業者は手を引くようになりますので、返す波のようにこれまでの運送契約・料金体系が変わってくる可能性が高いです。国土交通省が掲げる政策では経済的自由競争を原則としており、料金交渉の場を設けること、これまでタダで行わせていた附帯業務料金を支払うこと、長時間労働の原因とされる荷積・荷卸し待機時間解消が主な監視ポイントですから、運送事業者側にも戦略的に料金交渉を進めるための複数の切り札(カード)の準備が必要になるでしょう。