オフィス鴻

運送業者の取引解消

2024年10月08日

「運送2024年問題」については、このコラムで掲載しており詳細については割愛することとして、現状の運送会社が置かれている状況を取引契約という視点から考察してみました。結論的に言えば、これまで長時間労働(ドライバーが望んでいたわけでは無いことに留意)によって支えられてきた「モノを運ぶ」という社会インフラ基盤が、労働時間規制(働き方改革)によって当日の運送業務だけでなく、翌日に仕事ができない状況(休息時間の確保)として一層のトラック不足を引き起こして貨物滞留という現実について社会全体での認識が不足していることが最も重要な論点であると編集人は考えています。

実際に、運送事業者に対するコンプライアンス遵守の概念が荷主側に極端に不足していることは、荷役作業・待機時間等の本来ならば荷主側が負担すべき作業および料金を運送会社側に取引中止を暗ににおわせ押し付ける事例が中小企業よりも大企業に多く見られます。そして改正物流二法の改正が引き起こしたトラック供給過剰によって、最終的には「代わりの運送事業者ならいくらでもいる」としてきた事業者ほど、運送会社側の改善要求は強くなり一転して立場が逆転する状況も生じてきました。健全経営を掲げる運送会社との交渉が上手くいかなくなると、適当にお茶を濁しながらズルズルと解決を先延ばししてきた荷主の中には「モノが運べないことのリスク」を知ることとなり、慌てて新たな運送事業者を探している荷主も多い状況です。

それでも法律を順守しないで運行するブラック運送事業者の存在と、荷主への行政処分が進んでいかない間は、まだまだ解決への道筋はこれからだと考えています。特に急激な円安・物価高により「モノが売れなくなってきた」現実から目を背けることは、荷主側の企業存続と言う大義名分の下では運送料金の上昇にはプラスにはなりません。唯一言えることは、裏切った荷主に愛想をつかし、見切りをつける運送業者が増えていると言う当たり前の事実(信頼関係破綻)でしょう。