運送2024年問題(1)
2023年02月04日
運送業界の「2024年問題」という言葉をご存知の方も多いでしょう。要約すると、働き方改革関連法案成立後から運送業界には猶予期間が与えられ、時間外労働時間の上限規制(長時間労働の改善)、同一労働同一賃金の導入、60時間超割増賃金支払などが2024年から適用されることを指します。貨物自動車運転手には、改善基準告示(年間3,516時間、月間293時間(例外的に320時間まで可能))が労働基準法第32条とは別に適用され、今後は年間960時間の時間外労働(平均月間80時間)が上限となりますが、国土交通省・労働基準監督署・警察の間では既に官庁の枠を超えて情報共有できる仕組みが構築されています。
編集人はこの問題解決に取り組んだ経験があり、委受託料金と賃金の2つの大きな障壁が立ちはだかっていると感じています。平成2年の規制緩和(物流二法)で一般貨物自動車運送事業への新規参入増加(閑散期の安値受注)と、荷主側の一方的な値下げ要請(一部の荷主は健全な料金体系です)が顕著で、BEP(損益分岐点)が高い運送事業では、改善基準告知違反が常態化している事業者も多数みられます。また、コロナ禍、ウクライナ問題、為替変動など運送事業に係る諸経費(特に燃料費)が軒並み上昇しており、適正価格維持と実勢価格の乖離構図は早急な改善が難しい状態にあります。
実際、貨物自動車運送事業の届け出料金表通りの運賃を適用している事業者は少数派でしょう。アメリカでは禁止されている料金の中抜き(利用運送や「水屋」と呼ばれる多重下請構造行為)から抜け出して適正な料金収受を行い、赤字受注をしないことが最適解に近いのですが、配送無料はサービスの一部と捉える消費者も多く、中間流通事業全体で取り組む必要性を感じています。