運送DX導入と利用運送事業
2023年11月24日
第一種貨物自動車利用運送とは、求貨・求車マッチングサービスとも呼ばれ、需給関係調節機能を前提に手数料収受をビジネス化した事業です。簡単に言えば、元請けから下請けへと運送業務を依頼する途中でちゃっかりと口銭(手数料、差益)を中抜きする、多重下請け構造の元凶とも言われるサービスを指します。1980年代後半あたりから、多くの企業では物流部門を独立させて物流子会社を設立することで、さまざまなリスクヘッジ(出向先の確保、物流費・人件費削減、利用運送(中抜き)など)を行ってきました。その結果、元請け料金から5~20%程度を手数料として差し引いた金額が、物流子会社経由で運送会社に支払われることになった経緯があります。
また、旅客運送事業(タクシー・バス)は、国土交通省で適正なコストを査定して認可された正規運賃(一部、例外あり)を必ず収受できますが、貨物運送ではこの下請け構造や極端な市場原理(原価割れの帰り荷運賃など)が常態化しています。そのため、荷主との協力体制に基づいた運送会社の努力であれば、生産性・効率性(例えば、2018年の経済産業省統計では平均積載率は40%など)向上と、ドライバーの長時間労働や低賃金問題への解決への道筋が見えてくるでしょう。
運送業界内では効率的な輸送ネットワーク実現(荷役・待機時間の短縮、共同配送など)が盛んに解決策として議論されますが、仮にそれらがDXで実現されたとしても、荷主から収受する運賃が効率化実現を理由に下げられれば悪循環に落ちるだけです。また、勘と経験で仕事をこなし、どんぶり勘定で原価計算すらまともに開示できない運送会社(全体の60%とも言われています)が荷主と対等に交渉することは、非常に高いハードルを感じます。もし、貨物が届かなければ経済活動や一般生活に支障が出ますから、「運送のBCP対策」などを含めた多面的な交渉能力が必要でしょう。