オフィス鴻

長距離トラックと自動運転

2025年11月12日

物流2024年問題による働き方改革は、ドライバーと言う職業の根本的改善にどのくらい寄与したのかという視点での検証作業が殆ど行われていません。特に長距離便を運行している運送事業者では、改善基準告示に基づく拘束時間等の制約に加えてドライバーの給与減少が離職を招くなど悪循環となっています。多くの運送会社では基本給を低く抑えるかわりに時間外手当で報いる給与体系を採用しているため、長距離運行はかつてのような稼げる仕事ではなくなっている現実があります。これまでの月収(50万円以上)を支払うには、法規制と料金値上げと言う厳しい壁があるのです。

特に長距離運行はパレット回収ハードルが高いことから、路線便(特積)を中心にバラ荷役が未だに多く残っています。そのため高収入と引き換えに慢性的な腰痛、睡眠不足、外食による偏食などが、身体に大きな負担となってきます。その悪影響は加齢により顕著になるので、近距離トラックの仕事に収入減を覚悟して変えるか他業界(タクシー等)に転職するかの選択を迫られることになります。いくらドライバー不足と言っても持病や慢性痛(特に腰痛)を抱えた方を採用することは企業運営リスクに直結しますから、運送事業者でも年々採用を見送ることが増えているのです。

一方でスタートアップ企業を中心に、自動運転による高速道路上での隊列走行が実証実験段階から試験走行段階へと進歩してきました。ここで消費者や企業の方に一考して頂きたいのが、その商品・製品が本当に今すぐ必要なのかということです。物流業界ではD+1とかD+2とかで表現され、リードタイム(翌日着、翌翌日着)のことを指しています。たった1日2日のことと思えるかも知れませんが、工夫次第では積載率を高めることが出来て結果的にCo2削減やコスト削減に繋がります。運送業界が社会インフラの一端を担っている以上、その維持には企業・消費者の協力が必要だと言うことですね。