運送2024年問題(3)
2023年02月06日
公正取引員会では下請け法違反の調査を毎年実施しています。つい最近、「優越的地位の乱用(荷主が価格転嫁協議の場をに積極的に設けていない)」違反があったとして、運送事業者を含む13企業の荷主企業名が公表されましたが、荷主・運送事業者の双方の立場からすると、荷卸先の課題が含まれないことにもどかしさと違和感があります。
編集人は届出運賃(または契約書)の完全義務化が安全運行の前提条件の1つであり、運送事業での経営改善と賃金底上げの実施には、料金交渉(ダイナミックプライシングなど)と同じくらい就業規則・賃金規程の適正化が重要だと考えていますが、ハードルは非常に高いです。一例では、燃料サーチャージ制(特別積合では、日本で一番早く導入)は比較的受け入れ易いのですが、改正標準運送約款にある運送附帯業務の「待機時間料」「積込・取卸料」「横持料」の役務対価請求(現場の現状を知る)が一番進んでおらず、現場の実情を踏まえた上での数値化が契約改定交渉での落としどころだと思います。
また、料率制導入は流通・商社系荷主との比較的大規模な契約内容に多く、デフレ経済下で運送事業者の責によらない運送料金値下げが実施されてきました。荷主の立場では商品・製品価格が下がっても運送料金の変動費化ができ、委受託契約が違法でない限り運送会社の経営努力の範疇という口実ができます。そのほか、他社との形骸的コンペティションやコンサルティング会社による料金見直しで、値下げを飲まざるを得ない経営環境に陥りがちです。
次の章では、有償旅客運送事業(タクシー・バス)の実例から「運送収入兼作業歩合制」による賃金・収入水準の底上げ、第二のベーシックインカムを得られるような、自動車貨物運送事業法の一部改正(ワーキングシェアと車両稼働率・積載率向上)の必要性を考えたいと思います。