オフィス鴻

3条書面(発注書)

2024年01月08日

物流に関わる方でも、下請法上で規定されている発注書(3条書面)の交付義務について正しく理解されている方は少数派だと思います。法律では、親事業者が下請事業者に対して取引委託時に交付する書面のことで、「公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。」と定められています。

また、親事業者が下請事業者に対して取引の委託をしたら、直ちに発注書(3条書面)を交付する義務があるため、取引開始段階で取引条件が明確化されることから、後日理由の明確でない値引きや取引条件変更などのリスクを防止する役割を果たすものです。また、原則口頭での発注は不可とされ、緊急発注時では取引委託後直ちに、下請事業者に発注書を交付する必要があります。発注書の記載事項は、主に代金、委託役務内容、支払方法・期日など下請代金支払遅延等防止法より定められており、締結契約書に記載があれば3条書面の交付に代えることも可能です。

この3条書面を取り上げたのは、令和2年の運送約款改正で附帯業務(荷役、待機時間等)の有償化が明文化されましたが、物流業界(特に運送業界)では契約書に記載されていない附帯業務を無償で行わせる慣行があり、ドライバーの長時間労働や賃金UPを阻害する大きな要因となっているからです。編集人が運行・配車・販売管理システム導入にあたり最も問題視しており、中小事業者が97%を占める運送業界の低収益構造(多重下請け、採算割れ受注など)を改善するには、新たなシステム投資に資金を回す余裕のない事業者でも使用できる安価な共通インフラ整備(契約書番号、不記載事項がある場合の発行不可、請求業務との連動など)が不可欠と考えているからです。