ゼロゼロ融資のモラルハザード
2024年03月16日
昨年10月の日本経済新聞に、帝国データバンク調べとしてゼロゼロ融資返済本格化に伴い、コンプライアンス違反に起因する倒産が増加しているとの記事がありました。具体的には粉飾決算・業法違反が最も多く、融資審査でNGとなるような企業に対しても、コロナ禍での資金繰り支援として融資を実行した金融機関の審査の緩さ(迅速化のため)が指摘されています。また、金融機関は信用保証協会が返済を肩代わりするため、本来ならば淘汰されるような倒産予備軍(ゾンビ)企業の延命に繋がっただけとの指摘もあります。
また、日本の低金利下で貸し手側(審査・融資)である一部金融機関で取引先業績の改竄が発覚した例もあり、今後返済不能や借り換え融資を受けられない企業の倒産が増加する可能性は高いように思われます。約40兆円にも上るゼロゼロ融資のうち、日本政策金融公庫と商工中金による融資額(14兆円)の約6%が不良債権となり、今後民間での融資分でも多くの不良債権が発生するでしょう。特に、返済開始後の資金手当のため金融機関に借換や追加融資を依頼した際に不正が発覚することも目立つそうで、架空取引で財務諸表を良く見せたり、取引実態のない手形発行などもおこなわれているケースや補助金の不正受給、横領などのコンプライアンス違反による倒産もあるそうです。
かつては「晴れの日(業績が良い)は傘(融資)を貸すのに、雨の日(業績悪化)は傘を貸さない」と言われた大手金融機関ですが、ネットバンク等の普及により店舗閉鎖・ATM削減・法人担当支店統合など事業構造改革を進めています。日銀の低金利政策により融資金利減少が続く中、編集人にも長年給与関係の取引口座として利用している某大手銀行の営業担当者から、まとまった入金があると電話で金融商品販売を勧められることが増えました。金融商品には元本割れするリスクがあることを十分に説明せずに、後日トラブルになるケースもあるようで金融機関としてのモラルが問われていると感じます。