宿泊業界の人手不足
2024年11月03日
編集人は昨年・今年と4回程、小規模施設でも飲食部門およびホスピタリティに優れている宿泊施設に病気療養を兼ねて3泊4日行程で国内旅行をしてきました。コロナ禍前後で比べると、訪日客が集中する大規模ホテルでは客室稼働率を一定水準(通常70%がBEP(損益分岐点)とされています)に抑えながら料金を適正水準にすることで業績が上向いている企業が増えています。1980年代頃までは日本の旅館を中心として社員旅行やグループでの団体客をターゲットとしていましたが、バブル景気崩壊等を経て人員削減(特に客室担当の仲居さん)する宿泊施設でも個人客を集客するためにSNS等での集客競争(簡単に言えばサイトを活用した値引き)に拍車がかかった状態が約30年近く続いていました。
宿泊業界は、設備装置型産業構造(建物)であり物流業界と似ているビジネスモデルです。そのため、変動費部分(多くは人件費・食材費等)の経費削減策に一旦手を付けてしまうと施設のサービスレベルが低下したと顧客が感じやすい傾向にあり、ロイヤル・カスタマー(リピーター)が減ってしまい廃業する事業者もあります。当然、他事業者との差別化を図るには施設の充実度・料飲部門でのサービス(最近は食事の部屋出しが減り、バイキング形式が主流になりました)の優劣が経営収支に大きく影響するため、閑散期には安価な料金設定で集客を行う事業者も少なくありません。いわゆるダイナミック・プライシングや二重価格設定と呼ばれる手法で人手不足を一時的に補うこと(最低運営要員の外注など)になり、リピート戦略とカニバリゼーションの矛盾が業界全体に蔓延している状態と言えるでしょう。
特に優良顧客リストにはリピーターに関する情報が集約されており、大規模ホテルとは異なった均一的でないサービス提供も差別化されたブランド価値として考えれば、多少料金が高くても顧客満足度は高くなります。結論的ですが、サービスが料金以上と感じられるかが成否を分けると考えています。