オフィス鴻

日本のワイナリー危機

2024年09月03日

今年7月、サッポロビール社が山梨県甲州市にある勝沼ワイナリーを来年度に閉鎖すると発表しました。約50年前から醸造している日本ワインの先駆け的存在で、日本ワインの素晴らしさは多くのコンクールでの受賞歴をみても特筆すべきものがあります。ボージョレ―ヌーボの爆発的人気以降、ワインの消費量は大きく増加して一大ブームとなり、2000年代になってからは各地で小規模ワイナリーが次々と誕生しましたが、輸入ワインと比較すると市場占有率は1桁台と低迷しています。また、日本酒の酒蔵が爽やかで飲みやすいフルーティーさを前面に出した商品や微発泡酒を販売し始めたことも影響していると考えられます。

さらに、最近の健康志向(ノンアルコール商品)や若い世代のアルコール離れ、ブドウ農家の高齢化、農地法による自家一貫製造ができないことで価格面の優位性が保てないなど以外にも、シャインマスカットに代表されるような高価格帯のブドウ栽培へと生産者が切り替えているなど、様々な要因から同社の経営判断に至ったものと思われます。先日も長野県産の国産ワインと日本酒を20種類ほど飲む機会がありましたが、編集人は価格面より料理との相性に対する選択肢の少なさが気になりました。ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアのワインと味わい・品質・価格を比較することはそんなに難しくはありませんが、今後も新たなコンセプトを持った優れた商品が日本で生まれることを期待せずにはいられません。

なお、消費低迷の原因と同じようなことかもしれませんが、個々のワイナリーでは生産量が少ないため飲食店向けの販路開拓が難しい(安定供給が保証できない)ことも影響しているように思います。言い換えれば、卸問屋では数量・価格面等から扱いずらい商品のため自ら販路開拓をする必要があるなど、日本の中間流通での商慣習が弊害となっている可能性もあると言うことです。日本人の職人気質・研究熱心さなどから再び日本ワインブランドが復活することを願っています。