オフィス鴻

木徳神糧

2025年09月23日

小泉農林水産大臣が「コメの流通は不透明で、一部の卸売業者の営業利益が5倍に達している」と指摘したことを受け、巷では中間流通事業者である米卸問屋に対して多くの批判が寄せられる事態は記憶に新しいところです。その中で最大手に位置する木徳神糧社が発表したプレスリリースでは「長年の低収益構造がコメ不足の露呈で市場が急変したことによる一時的な利益拡大」と釈明する事態に追い込まれました。この背景には中間流通事業者が5次問屋まであることが問題視されて以降、市場価格のコントロールや出荷調整などに対する世間からの批判をかわす狙いがあったようです。また一部には最近食糧危機に陥っているとされる中国への米横流し疑惑、JAによる放出米買占め(全数量の95%とも言われています)と価格調整疑惑なども挙げられているます。

中間流通の世界で長年仕事をしてきた編集人にとってはこれらのことは決して軽視してはならないものの、もっと考えるべき点があるように思えるのです。例えば1970年代のオイルショックでは全く関係のないトイレットペーパーが消費者に買い占められたことや、コロナ禍での高齢者行動や転売目的でのマスク・消毒グッズ等の買い占めなど少し冷静に消費者が判断すれば品不足は深刻化しなかったであろうと考えています。因みに台湾でもカップラーメンやティッシュが一時的に店頭から消えましたが、行政側による「好きなだけ買ってください」とのメッセージが発信されたことで収束に向かいました。

また5次問屋云々を問題視するのならば小量しか仕入れられない街の米屋さんは廃業せざるを得ない訳ですから、生産効率向上と中間コストの観点で農林水産大臣がもう少し丁寧に説明するべきだったろうと思われます。もちろん有権者に伝わりやすいメッセージではあったものの大切な部分が欠落していたことは報道側の姿勢にも問題があったことを裏付けており、一種のシビリアンコントロールによるレバレッジ効果を考える良い機会だったのかも知れません。そして結果的に飲食業界が垣根を超えて軒並み値上げに追従したことで、最も困ったのは外食回数が減った消費者ではないかとも考えているのです。