オフィス鴻

海ぶどうの陸上養殖

2025年12月09日

日本国内、特に中山間地が多い地方で海産物の陸上養殖が盛んになってきました。かつてはチョウザメ(キャビア)やトラフグの養殖実証実験が廃校になった学校等の施設を再活用する形で進められていましたが、最終的に商業的成功までたどり着いたのはごく僅かにすぎません。因みに大消費地である首都圏では、水産庁の資料で陸上養殖参入施設は約50か所とされていて、バナメイエビ・ボタンエビ・エゾアワビなど以外にも、沖縄特産の海ぶどうの養殖も始まっています。つまり海なし県での海産物生産によって新たな産業が創出され、年間を通じた安定収益が見込める可能性があるのです。

編集人も海ぶどうは大好きですが一度冷温保存をしてしまうと実が縮んでしまうため、これまでは沖縄から常温で直送してもらうか、または専門の沖縄料理店で食することにしていました。海ぶどうとはイワズタ科イワズタ属の海藻で、一つの房にいくつもの粒がついているのが特徴でつぶつぶの食感が楽しめます。海外ではグリーンキャビアと呼ばれることもあり、低温に弱い海藻のためオーストラリアやハワイなどの熱帯・亜熱帯地方でしか生息していません。日本では宮古島の一部でしか自生していませんので、販売されているものの多くは養殖物ということになります。

日本の気候が徐々に北上傾向になってきており、これまでの産地から新たな産地へと変わりつつあります。しかし天然物は天候に左右されたり収穫量が安定しないと言う欠点が付き纏いますから、養殖物が市場で増加するのも時間の問題かもしれませんね。特に東京は世界的な美食都市ではありますが、農林水産省の資料ではカロリーベースでの食料自給率は0.49%に留まっています。今後東京での耕作地面積や漁獲量の大幅増加は見込めませんから、少なくとも首都圏全体で陸上養殖に取り組む意義は非常に重要だと感じています。