神戸物産と消費者
2025年12月08日
神戸物産という食品メインの格安スーパーマーケットがあり、最近はフランチャイズ形式に注力した事業が好調のようです。同社は元々食品生産工場ラインの隙間時間を活用する形で安価な商品を提供することで知られていましたが、最近の国際為替(円安)の影響を為替予約を活用した経営でデリバティブ評価益を出したことで好業績を維持しています。ただ売上高に占める粗利率改善幅は少なく、全部で1,000店舗を超える店舗維持にはまだまだ難関が待ち構えていると言えるでしょう。実際に消費者の節約志向の高まりが業績を下支えしているものの、競合他社は多くなっています。
まずはOKストアを中心とする消費地密着型安売り店舗、コストコのようなメンバーシップ制店舗、ドラッグチェーン、そしてもっとも大きな影響があるのはECの存在だと考えています。そして消費者の節約志向に頼るだけでは、いずれ消費者離れが起きるリスクも排除できない事実でしょう。これまでは大量に安く購入することで様々な使いまわしレシピがSNS等で拡がっていましたが、これからは共稼ぎ世帯が時短のために少々割高な食材でも購入する傾向が強まると考えています。つまり低価格戦略に品質(味・安心・時短)が追い付いてこなければ、淘汰が始まる可能性があるのです。
実際に海外で衰退している地方都市では、ディスカウントストア(海外ではHDS(ハードディスカウントストア)とも呼ぶそうです)に頼って生活を維持していた高齢者層から若年層までが、店舗の撤退等で更に可処分所得が減少している年金受給世代や非正規現役世代の生活を圧迫して、最終的に食費関連費用を削らざるを得ない状況にあります。日本国内でも年収1,000万円を超える層が大企業で増えているそうですが、実際には社会保障費等と諸物価上昇によって10~20年前の年収1,000万円世帯の生活感に比べたら決して生活は豊かになったと思えない気がしています。



