オフィス鴻

食味形容語辞典

2024年07月18日

編集人の自宅に大岡玲氏著の食味形容語辞典なるものがあります。大岡氏は、小説・エッセイ・評論・翻訳など幅広い分野でご活躍されておりこの本は1996年発刊で、数年に1度くらいの頻度で現在でも時折読み返しています。その前書きには、バブル景気が空前の無駄遣いを産み出した、グルメ文化を発展させた、料理評論家がもてはやされるようになったとあり、今の日本の食事情について先見の明があったのだなと思います。ただ、著者の目的は「文化的使命として食味形容詞を定着させたい」ことだそうで、美味しい料理に恵まれた日本ならではの「食のことば」を知るには面白い書籍だと考えています。

一例ですが、「キレ」「深い」「仕事」「まったり」「結婚(マリアージュ)」など、料理の素人が使うには少々勇気のいる言葉が多く掲載されています。料理については「おふくろの味」と形容されることがあるように、読者の出生や子供の頃の食生活が大きく影響していると編集人は考えています。当然、百人いれば百人の味覚に対する感性があるのは当たり前のことだと思いますから、全ての読者ご自身ごとの「食味形容語辞典」があることでしょう。ただ、最近は世界的な異常気象の影響で農産物の北限が高緯度になり、海産物も海水温上昇の影響を受けて産地も徐々に北上していると言われます。また、子供の頃は見向きもされずに捨てられていた食材(例えば、茨城沖のメヒカリなど)が新たな料理として提供されるなど、日本の食文化も変わり始めてきました。

昨今は農林水産省を中心に6次産業化(1次産業;農林漁業者、2次産業;加工、3次産業;販売・サービスの積算)を支援して、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上する取り組みが始まっています。これらは、ECビジネスの進化により可能になってきた一例にすぎませんが、一方で生産者・物流事業従事者の高齢化・減少、異常気象に歯止めがかからない現状を鑑みると、あと10~20年後には新たなビジネス化が進む領域だと考えています。