飲食店経営の継続性
2023年12月09日
飲食店ドット・コムを運営するシンクロ・フード社の調査では、3千件超の店舗物件情報が掲載されています。総務省統計局の資料では飲食関連業(宿泊・デリバリーをを除く)は全国で約30万件、売上げ規模は30兆円弱になるそうです。一方で、廃業率は20%、つまり3年以内に半分以上が閉店している計算になります。これは、TSR調査でもほぼ同じであり一般企業の平均寿命23年に比べて相当短期間で閉店・廃業(退場)するため、居抜き物件・厨房設備など含む造作譲渡情報の仲介ビジネスとして成立する土壌が根底にあるようです。
また、コロナ禍後の公式データはありませんが、飲食業に支援されてきた短時間・休業・種類提供制限などの支援金や持続化給付金で一時的に事業を継続できてきたものの、これからゼロゼロ融資の返済に行き詰まる事業者も増えてくると思われます。飲食店経営の成功者が一定数存在することも事実ですが、参入が比較的容易な過当競争気味の飲食業界でプラスのキャッシュ・フローが生みさせなければ、いずれ初期投資導入資金や運転資金が枯渇することは経営的に明らかです。何かの好条件または他社との差別化と冷静な経営判断力がなければ、定年後に趣味や夢だけで飲食店開業に退職金・老後資金を投入することなど危険極まりないように感じます。
一般的に飲食業は、食材原価・人件費・店舗運営費がざっくりと売り上げの各30%がBEP(損益分岐点)と言われていますが、経営規模の小さい街中の個人飲食業が長続きしているのは、常連客の多さ、高い味・サービスに定評があるなど以外に、家族経営(年金も含む)、自宅の一部を使用、廃棄率減少など店舗の食材料を自家用に転用(本来は賄いも一定金額以上は税法上所得に該当します)できるなど、固定費部分を軽くすることができる点で優位性があります。独立・開業は比較的容易ですが、昨今の電気・ガス・材料費高騰などの変動要因を考えれば、他事業に比べて勝率の低いビジネスだと感じます。