飲食業の廃業・倒産
2023年12月09日
コロナ禍では、飲食業を中心に手厚い支援が行われました。東京商工リサーチの調査では、焼き肉店(大手が業態変更した影響)を筆頭に飲食店の倒産件数が徐々に増え始めていることが明らかになり、中小企業支援策として実施された実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」や追加支援策は、最終的に国民の税金で返済不能分を穴埋めするため、審査の迅速性と融資実行を優先しました。また、政治家や不届き者による不正行為が起き、また明らかに経営実態に見合わない(返済が見込めない)企業へも貸し出しも行われました。
当座のつなぎ資金として借り入れた中小企業であればキャッシュ・フローを基に返済を実行できますが、特に経営知識に乏しい飲食業は単なる運転資金や他の借入金の返済に充てていたところも少なからずあるようです。もちろん、必死の経営努力を行ってきたことで物価高騰・人手不足等のあおりを受けても、徐々に客足が戻り経営も立ち直りつつある企業もあります。また、返済が難しい場合は、金融機関との交渉次第で返済延期(リスケジューリング)も可能ですが、その後の事業継続・返済計画があいまいだったり、借入金の使途が申請と異なっていたりすれば、相談に行っても専門家(税理士等)のアドバイスなしには交渉自体が暗礁に乗り上げる可能性が高いです。また、破産や返済債務不履行ともなれば、社会生活上様々な制限が課せられますので、その後の生活再建に影響することは必至です。
最も留意するべきなのは、社会保険料や税金納付の督促状を放置する行為です。いずれも所管の年金事務所や税務署に事前相談することで、納付期間や分割納付などに猶予をいただけることがあります。また、法律上では、残余資産の債権者への分配について優先順位が決められており、抵当権付債権、未納税金・社会保険料、未払い給与(一部を除く)などに次いで最後に破産債権(仕入れに係る買掛金等)が分配されます。いずれにせよ、第三者に多大な迷惑をかけ、信用回復には相当の時間がかかりますから、回避するために最大限の努力が必要なことは申し上げるまでもないでしょう。