タクシー料金と現場感覚
2023年11月27日
ライドシェアサービスが認められていない日本で、アプリ配車を条件とした「ダイナミックプライシング制度」の導入検討が国土交通省で始められました。このタクシーのダイナミックプライシングとは、閑散・繁忙の需要に応じて最大50%の範囲での料金変動を想定しているようですが、タクシー乗務員が減少し、非稼働車両が増加している現状では、雨や猛暑の日は流しは言うに及ばずアプリですら配車不可の時も多くなりました。実態は、低料金時間帯での稼働車両が減る(乗務員の休憩等)と予測されるなど、利用者目線が不足している感があります。
実際に、隔日勤務(夜勤あり)をしている都内のタクシー乗務員さんからお話を伺うと、売り上げ歩合制でも1日8万円×12日勤務×歩合60%≒58万円程度の収入となり、本人の努力次第(稼げる方法)だと言います。ただし、業界全体での所得平均値は、高齢者(年金受給者)、短時間勤務者、日中限定(子育てや時給制)、地方過疎地勤務などの働き方を含めたバイアスが掛るため、平均値・中央値共に低く見えます。新人募集では1年間の賃金最低保証(30万円)と祝い金支給、アプリ配車のみなどを謳う企業も出てきています。ただ、お客様相手のビジネスですから、仕事への適性(向き・不向き、乗客とのトラブルなど)が大きく関係すると言ったところでしょうか。
一方で、公共インフラとして、地方での交通サービス網維持につながる「貨客混載」「最低台数・個人タクシー営業規制の緩和」などの施策検討は評価に値します。また、以前から不思議に思っていた大阪と神戸のタクシー料金割引の違い(55割;大阪から乗ると5千円以上は50%割引になるが、神戸から乗ると同じルートでも割引が適用されない)が撤廃されるようですし、大阪繁華街近くでの近距離客の乗車拒否など、まだまだ本来やるべきことがたくさんあるように感じています。