オフィス鴻

個人事業主とインボイス制度

2024年02月12日

2023年10月から、事業者が消費税額を複数の税率に分類・記載する「適格請求書(インボイス)制度」が開始されました。公正取引委員会は、消費税相当額を発注価格から一方的に差し引く旨を通告した発注事業者には下請法抵触(優越的地位の乱用)にあたるなどとして警告を発しています。その一方で、フリーランス等から制度への反対意見が相次ぎ、財務省も負担軽減策として3年間の経過措置を織り込みました。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)導入の背景には「軽減税率制度への対応」と「益税解消」があります。軽減税率導入では、預かり消費税額が把握できるインボイス制度導入(事業者登録制度)により請求書への消費税額の記載が義務づけられ、年間売上高が1千万円以下や、一部の新設法人は免税事業者として消費税納税が免除される特例措置(益税)があり、現時点では年間2千億円の税収増が見込まれています。ただし、該当する納税対象者の多くは、報酬支払・契約相談 制作料と著作権(二次使用)に関する契約締結をしておらず、受注者側に不利な内容だとして、昨年5月に「フリーランス・事業者間取引適正化法」が制定されました。

なお、事業者が納める消費税には、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなす簡易課税制度もあります。今回の制度は、売り上げに占める個人事業主等への給与(非課税)の割合が高いケースだと益税額も多くなるため、金額の多寡は別として一部の個人事業主(声優、マンガ関係者、個人タクシーなど)が実質的な可処分所得減少と取引中止懸念から反対の声を上げているようです。今後、フリーランスの仕事探しにマッチングビジネスが多く活用されそうですが、まだ直接規制する法律はなく、高額手数料・契約内容の一方的変更など負の側面もあり、今後は許可制・届け出制などで適正化を図っていくことになるでしょう。