非日常からの教訓
2023年12月30日
コロナ禍で、従来の働き方が大きく変化しました。在宅勤務(リモート)、AI導入(小売業ヤオコー導入の自動発注システム)、人手不足による賃金上昇、新型コロナ特例の雇用調整金、緊急備蓄の重要性など、総務・人事・企画部門では経験したことのない内容も多いでしょう。しかし、5月8日に新型コロナが5類へと移行されたことで、この2年間の各企業の取り組みの総括は、今後の企業活動の指針となる学びも多かった気がします。
例えば、在宅リモート勤務では、通勤交通費(定期代)や不要不急の出張中止による経費減少、リモート進捗管理方法、不要な業務・人員の把握、対面効果の重要性などです。また、在宅ストレスの増加、パート勤務者の退職・補充、交代要員数と質の確保などにも影響がありました。AI導入では少ないオペレーション要員数での店舗運営、購買データの活用(天候予測の精度の高さ)などの効果検証ができたそうです。また、飲食業では人手不足対策に「スポットワーカー(スキマバイト)」方式を取り入れたり、一部のタクシー会社では配車アプリ専門(流し営業はしない)の短時間勤務者シフトを取り入れたりと、さまざまな取り組みが始まっています。まずは、BEP(損益分岐点)の回復と生産性向上を第一歩として業績回復を試みているものと思われます。
なお、労働生産性の観点ではイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した有名なパレートの法則(上位の2割が全体の8割を生み出す)の派生形として「2:6:2の法則(積極的に働く2割、普通に働く6割、働かない2割)」は、長期的な視点に立てば、有事の安全弁(緩衝材)として、また特定の条件下で発生するムダの相対性としての意味が数理的に解明(有名なのは「働きアリ」と「働かないアリ」の話)されてきて、図らずも今回の有事(コロナ禍)でその有用性の一部が実証された点があったとのことです。非日常だったからこそ、人員削減を実施した事業者とそうでない事業者の差が学びに結びついたり、企業による対応の違いがその後の業績回復スピードの差に表れたことは、今後の働き方の多様化にもつながることでしょう。