オフィス鴻

次世代航空システムと安全運航

2023年09月29日

国土交通省航空局では、多国間次世代航空交通システム(MR TBO:Multi Regional Trajectory Based Operations)の試験飛行を開始して、2040年に導入する計画を発表しました。試験機であるボーイング787-10機はアメリカから成田に到着後、シンガポール、タイへと4カ国の航空局が連携して試験飛行を実施する予定だそうです。

具体的には、飛行中の航空機相互の間隔の保持、通過時刻と経路の最適化を自動調整するもので、空域混雑緩和、上空待機解消、燃料使用量とCO2の削減、定時性向上、天候・火山の噴煙などの情報をリアルタイムに把握することができ、現状のフライトプラン承認方式から各機体が緯度、経度、高度、速度を最適値に更新できるようになるそうです。 これは、空域は管制機関、空港会社、航空会社などがそれぞれ独自のシステムを使っている現状から、システム共通化実現に向けた取り組みが始まったことを意味します。結果として、人手に頼っていた航空管制処理の能力向上、効率改善が図られる(国家公務員の中でも航空管制人材の離職率は非常に高い)ほか、迅速なルート変更などパイロットの負担軽減にもつながるそうです。

ドローン技術やVSTOL (垂直離着陸)が格段に向上している一方で、コロナ禍での人員削減により航空業界での人手不足(航空管制、保安検査、地上スタッフ)、特に航空貨物グランド職の低賃金(平均357万円)問題が国の有識者会議で指摘されているそうです。乗客の安全を守るのは、パイロット、CAだけではありませんから、使命感への甘え、やりがい搾取的な方法で支える現状を改めないと、観光立国を目指す国策としては不十分で稚拙に感じますね。