オフィス鴻

マイクロスコープによる事故

2023年11月30日

今年6月に北海道の国道で、長距離バスと大型トラックの正面衝突事故があり、5人の尊い人命が失われました。事故現場では双方に運行法令違反は認められず、トラック運転手のマイクロスリープ(覚醒時に陥る、脳活動や作業効率が著しく低下する症状)が原因と言われており、時間にすれば数秒~数分単位で気を抜いても問題ないシーンや気が抜ける場面(退屈な授業、会議など)で生じるそうです。その結果、作業中のミスや交通事故(漫然運転)などの原因になるとも言われています。

広島大学の塩見利明教授(睡眠医学)は、「職業運転者が睡眠時無呼吸症候群及びその他の睡眠障害を伴う場合の乗務適性の評価方法の確立、並びに職業運転者の居眠り運転及び漫然運転の予防に向けた安全管理基準の作成等」の研究を睡眠医学的に進められおり、10秒後(挙動異常;顔や頭の揺れ、不自然な減速、瞬きがゆっくりになる)、20秒後(マイクロスリープ行動兆候の急増)、40秒後(抗眠気行動の減少)など、具体的特徴が確認されていて、デジタコの注意喚起機能搭載でも、事故を完全に防ぐことはできません。

また、全日本トラック協会の資料では、2022年のトラックが当事者となる死亡・重大事故は、車両1万台あたり1.27人(年間100人以上)、第一当事者の約9割が免許取得後10年以上の運転職でしたが運転経験とマイクロスコープの相関関係を明らかにした資料はありません。貨物自動車運送事業法では連続運転時間は4時間、その間の休憩時間を30分以上の確保が義務付けられています。なお、トラック運転手以外にも航空機パイロットの75%がマイクロスリープを経験したとの欧州コックピット協会調査もあり、疲労から来る脳が休息を求めるサインだと考えれば、脳の活力を回復させる行動(簡単な体操など)は死亡・重大事故ゼロ化へと繋がると考えています。