一般的に優秀な従業員が退職（意思表明）する場合、すでに転職先や独立自営などが決まっているケースが多く、翻意させるのは容易ではないと言われます。また、数か月～数年で退職するなど労働市場での人的流動化が進む中で「アルムナイ制度（出戻り自由制度）」を導入する企業が現れてきました。もともとアルムナイ（Alumni）とは「学校の卒業生・同窓生」を意味しますが、退職した元社員を組織化する仕組み（定期的な情報共有など）により、優秀な従業員（労働力）が退職した企業に対する愛着を持っている人であれば、社風や仕事のやり方にマッチする優秀な労働力を確保することができるため、比較的リスクの少ない効率的な採用方法の１つと言えそうです。

アルムナイの再雇用メリットは、戦力化までの人材育成コストの小ささ、外部目線（知識・経験）でのプラス効果期待度、新規取引先獲得などが挙げられます。また、オフボーディングと呼ばれる退職後も良い関係性を続ける施策は、リファラル採用、新規取引等に繋がるプラス効果があります。一方、採用側に客観的視点の不足があると、最新企業情報の漏洩リスク、アルムナイ制度維持コストの増加など、デメリット面にも目を配る必要があります。

転職が容易になり個人の価値観が変化していく中で、本当の退社理由を確かめる術は殆どありません。また、仕事上の失敗に起因する退職だとしても、他社の後追い（または出遅れ）、準備不足、経営判断ミス、先行投資なのかで評価は全く異なってきます。競合相手がある以上、ＩＴやＡＩ技術により、不確実性の残る状況でスタートすることもありますから、「目的（業績向上・構造改革）」と「手段（人事・採用）」がごちゃ混ぜにならないよう、日頃からアウトプット（本当の目的）を意識する習慣と実行力が人事部門になければ、ただの再就職採用の手段の１つにすぎないと考えています。