オフィス鴻

労働法のグレーゾーン

2024年03月21日

人事戦略や人事部門管掌を20年以上してきた経験から、従業員自らが労働基準法・労働契約法を理解することは、企業で働く(雇用契約を締結)上で非常に大切なことです。また、企業サイドにとっても労働基準監督署の立ち入り検査、従業員からの訴訟等に備える意味では、常に最新の法律に基づいて規程等を整備しておく必要があります。特に時間外労働、休日の取り扱い、評価、各種手当の性質などは争点となりやすいところであり、それ以外でも最高裁で定年再雇用後の基本給減額に関する判例(性質により評価すべきだとして、高裁へ差し戻し)が7月に出されましたので、今後60歳以上の従業員への処遇なども更なる検討が必須となるでしょう。

また、労働時間規制(時間外労働の減少)、物価上昇下での社会保障費・増税による実質的な可処分所得の減少などから、何らかの収入を確保したい所帯や社会との繋がりを求めて働きたいシニアも存在しますので、まだまだ賃金以外にも工夫の余地があるように感じます。最近は、若年層でも企業との距離感がお互いに試されているようなケースも見受けられるようになりました。

特に時間外労働は、36協定(労働基準法第36条に定められた労使協定)を締結した上で1分単位で支払う必要がありますが、変形労働制、固定残業制などを導入する企業も多く、運用方法次第では企業側の違法行為に該当するケースもあります。いわゆるブラック企業(例えば、残業代を支払わない、過少申告させるなど)ではなくても、割増賃金分の計算方法などがグレーゾーンがあったり、恣意的でなくても誤った運用を行っているグレーな企業もあります。そのほかにも、休日・法定休日・代休の取り扱いの違いや、従業員に非がある場合の対応(注意喚起、書面での警告指導など)、好き嫌いなどの個人的感情に起因する上司の問題対応と社内での情報共有状況、従業員側が客観的証拠(勤務時間のメモ、ボイスレコーダー、動画など)を保持している場合もあり、普段からトラブルに発展しないよう留意しておくことが大切です。