最低賃金と社会保障
2023年09月14日
最低賃金とは、最低賃金法(1959年施行)によって定められた最低限度の賃金です。また、最低賃金には、地域別最低賃金(都道府県単位)、特定最低賃金(特定産業)がありますが、一般的には前者を指すことが殆どです。ちなみに、2022年度の全国加重平均額は961円、東京都労働局は1,113円を答申、中央最低賃金審議会では2023年度は過去最高の41円(4.3%)、全国加重平均額は1,002円の目安が示されました。昨年7月の審議会では、「物価上昇が続くなかで賃上げの流れの維持、拡大を図り、非正規雇用の労働者や中小企業に波及させることや賃金の低い労働者の労働条件の改善を図ることは経済の健全な発展に寄与する」として引き上げ額を算出したそうです。
また、同時期に日銀が10年物国債金利を1.0%に引き上げ、追従して大手都市銀行が10年固定住宅ローン金利を3.5%程度に一斉に引き上げ、株式市場と為替市場の乱高下を招きました。これまで通り、最低賃金を最終決定する各都道府県労働労働局長も審議会の決定にならうでしょう。一方で、一部の職種・年齢層を除けば雇用情勢は空前の売り手市場だと言われていますが、子育て世代や年金生活者を中心とした短時間就業者にとってはマイナスのバイアス(求人の減少)が働く懸念も払拭されていません。まず、雇用増加ありきでその後に最低賃金を引き上げる欧米諸国の施策とは異なり、その是非はいったん棚上げしても、やはり社会保障制度改定との同期化(不公平感の解消)が必要不可欠だと感じます。
そして、最低賃金引き上げ自体は労働力の流動性、市場淘汰、稼ぐ力の向上など、今後の日本にとって非常に大切な施策ですが、単なる動機づけ要因のない賃上げだけが続くとすれば、それが従業員にとって当たり前のこととなり、生産性やモチベーションを上げるバイアスにもならず、企業の固定費(人件費)だけが増加するだけのように思います。