オフィス鴻

失敗を許容する経営

2024年03月23日

2022年に経済産業省の未来人材会議では、未来人材のビジョンについて「失敗が許容され、やり直しのできる社会への変化」と「日本型雇用システムからの転換」について提言が行われました。主旨は「自分で決めること」が挑戦へと駆り立て、仮に失敗してもその責めを負うことができる社会へと変容してくれば、失敗を冷静かつ客観的に受け止められるとしています。失敗を恐れて挑戦もしなければ、自己成長に繋がる失敗も経験できないわけで、年齢を問わずに起業(スタートアップ)に挑戦できるような社会的合意が形成されるようになる時代が近づいてきたのだと、編集人は改めて理解しています。

日本企業では新規事業に成功した人材はその事業の最高責任者として抜擢され、つぎの新事業挑戦は別の人材がスタートさせるため、それまでの過程での失敗経験が活かされずに同じような判断ミスや間違いが繰り返され、経験値に依る再現性の度合いが低くなると言われています。戦前・戦後の日本経済の発展・復興は答えのある課題に対して常に正解を導ける入試・試験に優秀な人材が中央官僚のエリートとなり、手堅い日本の経済成長を支えることに大きく寄与していたように思います。一方で、世界の大きな変化のうねりに乗り遅れた日本は30年にも及ぶ経済停滞期を経験しましたが、ここ数年企業業績も底堅く推移しており、潤沢なキャッシュフローを含む経営資源を使った新規事業への進出は、ゼロから生み出すスタートアップに比べて、遥かに経営資源面で社内起業の優位性が高いと感じます。

なお、新規事業にはこれまでの既存事業運営とは異なる従業員の意識と企業風土の改革、そして時の運が重要だと考えた時、アイリスオーヤマ社のように大企業では実現できなかった技術者の様々なアイデアが新ビジネスとして結実しています。生産年齢人口減少を憂うよりマーケット、仮説検証、組織と言った再現性のノウハウが数多くある中高年層(残念ながら全体から見ればかなり少数派)と若年層のコラボレーションが新たな日本型雇用システム移行への試金石になるように思います。