オフィス鴻

労働力移動と成長性

2024年03月13日

現在、人手不足が顕著な宿泊・飲食・運送・建設・医療福祉・介護等の業界では、雇用調整金や厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ(2025年まで最大50万円助成)」によって、逆に短時間労働者を含む労働力移動が遅れる原因の1つになるリスクがあると一部の有識者から指摘されています。つまり、本来IT化により推進されるはずの労働力生産性向上と新たな潜在的労働力確保が、補助金を含めると最低賃金等の賃金上昇分だけ労働時間が短縮されることで、結果的にIT化推進による生産性の大幅向上より事業者への一時的財政的支援策に過ぎなくなる可能性が高いということです。

本来のデジタル化の目的が政治の手段にすり替えられており、某タレント事務所の会見で指摘された問題点と本質は似てい居るように感じます。また、新たに発足したデジタル庁の要員は1千人に達していないそうで、諸外国と比較して脆弱と言える規模ですが、アナログ規制の見直しがどの程度のスピードで進むのかによって、批判も多いマイナンバーカードを活用(個人情報やトラブル発生問題の解決が先)したデジタル化による便利さを享受できる社会へと変貌する可能性を秘めていると思います。今後、主に人手不足業界の規制・ルールなどを新たなデジタル化を活用した産業へと深化させ再構築する必要性は感じますが、果たして年齢に関わらずどのくらいの労働人口が新たなスキルを習得する意思があるのかを軸に考えることが優先されそうです。これまでと同じ労働内容で賃金だけ上昇するのなら、あえて努力して高生産性で高度な専門分野への労働力移動する意欲を阻む一因ともなり得ます。

編集人は、難病での休職期間中に全く知らない分野を中心に書籍・SNS等で最新情報に極力触れるようにしていましたが、その2年間ほどでも想像をはるかに上回るほどのIT技術と社会的インフラの融合が進んでいることを実感しています。ただ、複数の高度な専門性と俯瞰的視点から物事を判断する力量がなければ、無駄に時間を浪費することも事実であるように思います。