監督官庁間の連携
2024年01月10日
ここ数年、監督官庁の垣根を超えた調査が盛んに行われ、中には社名公表に至るケースもでてきています。下請法違反事案の調査は、毎年中小企業にアンケートが送付され、一部では下請Gメンと呼ばれる調査員が対象企業へ直接訪問してヒアリングを行います。買いたたきや価格交渉などの違反はなかなか後を絶たないようで、積水化学工業と中部電力子会社が「価格交渉に後ろ向きな企業」として最低評価となり社名公表に至りました。もちろん、交渉経緯の詳細は明らかにされていませんが、昨年国土交通省が同様の調査で13社の社名公表(佐川急便等)に踏み切ったことは運送業界では画期的なことでした。ただ、その後料金改定交渉の場を設けたかは不明ですが、少なくとも何らかの行政命令には従ったものと思われます。
厚生労働省、国土交通省、労働局(労働基準監督署)、警察庁などが積極的にお互いの情報共有を始めて10年近く経ちましたが、やっと本腰を上げてきた段階に過ぎません。損保ジャパン社長の退任も、誤った経営判断の責任をとる形で収束を図っていますが、トップが全く知らなかったと釈明しているうちに「(不正行為について)実はわかっていました」と発言すること自体が企業としての信用をより失墜させることになりました。中古車販売業界を始めとした企業と損害保険会社の長年の蜜月関係(不正行為を含む)は、業界内では公然の秘密として扱われていたようで、営業成績を優先するあまり社会に与える影響への危機感と危機管理能力、自浄作用が不足していたのかも知れません。
一方で、主に詐欺・選挙・知能犯罪(サイバー事案など)を管轄する各県警本部に設置されている捜査二課がこの問題に加わるようであれば、現在の2事業者を含め新たな疑惑が発覚する可能性が高いと感じています。これを機に健全な業界へと経営の軸足を移す事業者もあれば、ほとぼりが冷めるまでおとなしくしている事業者も、経営難となればまた新たな方法で収益源を探しだす鼬(いたち)ごっこになるかも知れませんね。