全国規模のバス減便
2023年11月19日
日本バス協会の資料では、全国各地のバス運営会社で2030年には約36千人のバス運転手(全体の25%)が不足するとの試算結果を公表しました。同じく厚生労働省の資料では昨年でバス運転手の平均年齢が53歳(年間平均所得399万円)であり、今後60歳超の大量退職が見込まれるため、新規・中途採用が進まなければ乗務員不足と利用乗客不足により、減便や廃業が地方を中心に拡がると予測しているそうです。
国土交通省が関係団体と在留資格特定技能(外国人運転手)に自動車運送事業を含める方向で調整を進めているとも伝えられていますが、大きな既得権益であった第二種免許事業(タクシー事業も同じ)でさえ運行維持に必要な料金改定分に相当する認可料金引き上げが行えていないこと(概ね首都圏近郊は220円前後の均一料金)が浮き彫りになっています。また、敬老特別乗車証(敬老パス)の不正使用防止にあたり、公共交通機関ではタッチ式パネル導入が行われ、環境面からは新型EV車両の導入が進んでおり、人件費以外の運行コスト上昇が経営悪化に拍車をかけているようにも見受けられます。ただし、長距離高速バスに関しては高グレード化と運行計画見直し(主に降地時間帯)により需要が底堅い企業も多いようで、公共交通行政の対応の遅さが路線バス運転手不足にさらに拍車をかけている感があります。
編集人の住む首都圏地域でも、大幅な減便(1日1往復のみ)路線がある一方、逆に10%程度増便している路線もあり、私鉄系バス会社では連節型バス(約2倍の人員輸送が可能、これまで空港リムジン等で導入されていた)が主要路線で投入される計画があるようですが、その車両特性(車長が2倍になる)から運行可能路線が限られるなど一筋縄で解決できる問題ではないと思われます。最終的には、高齢化・過疎化等による自力移動手段を持たない住民の多い地域ほど、デマンド交通(乗合型小型車両)へとシフトするものと思われる半面、免許返納制度運用が皮肉な結果をもたらした形になったように感じます。