オフィス鴻

首都圏SM物流研究会

2024年04月22日

首都圏の大規模小売業(東急ストア、サミット、マルエツ、ヤオコー、ライフコーポレーション、カスミ、西友、いなげや、原信、ナルス)が資本系列を超えて「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み」を、競争関係から協力関係へと発展させていくことを決めました。主な取り組み内容として、加工食品・定番商品の発注時間見直し、納品期限の緩和(1/2ルール)、バース予約システム導入、パレット納品の推奨などが挙げられています。また、サプライチェーン全体の効率化を謳っていますが、サプライヤー(製造者)やホールセラー(卸問屋)との取り組み内容が主体で、この内容はこれまでも盛んに有識者や事業関係者から求められていたもので、資本系列を超えた点以外は特に目新しいものではないように感じられます。

ドライバーの長時間労働防止や環境問題など、各社が行っているのは未だ緊急対応策に過ぎず、政府の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の資料でさえも、2024問題は物流クライシスの始まりに過ぎないと記載されています。また、6月に発表された「物流革新緊急パッケージ」では、2030年以降は高速道路特定区間での無人トラック走行(保安要員なし)の実現可能性、モーダルシフト(船舶、鉄道など)など長距離輸送に対する施策が中心で、生活物資輸送の多くを占める中近距離配送中型トラック(積載4t未満)のドライバー不足への具体策は外国人特定技能資格での対応くらいでしょう。つまり、2024年問題対応だけでは抜本的課題解決に至らないと考えています。

また、これまで国会で議論されていない物流業界全体の危機が国民に伝わったことは大きな進歩ですが、運送事業への賃金底上げ策と引き換えに、ドライバー自身が無駄な作業や走行・時間つぶし等によって時間外賃金を増やす行為(非効率性)への法律面での企業支援策も必要だと考えます。殆どの施策が木を見て森を見ずの段階ですから、新たな改善のヒント・チャンスは運送事業者の現場にたくさん眠っています。