取締役登用への違和感
2024年02月22日
OECD(経済開発協力機構)も調査によると、日本の上場企業における女性取締役登用比率は15%程度で、アメリカの30%の約半分に過ぎません。このジェンダーによる経営幹部登用の課題は、女性に対する特有の配慮が各社にあり、法律的にも守られるべき点が多いことが一因のように感じます。例えば、新しく事業(所)を立ち上げる時、殆どの事業者(所)は人事制度に基づき所管の労働基準監督署に就業規則・36協定書など(監督署により若干書類は異なります)を提出する必要があります。このときに、労働法に基づいて女性に関する出産・育児・その他の法規制に準じた規程となっているかチェックを受けることになります。最近は男性の育児休暇取得が奨励(やむなく規程化している企業もあります)されたりと労働・職場環境はかなり変化していますが、逆に男性の働き方への障害(新たなことへの受け入れ拒否感や違和感など)や対応への戸惑いが起こることは想像に難くありません。
また、最近は女性の登用比率などを1つの経営指標として捉える機関投資家が増えていて、その中にはジェンダーの平等性が高い企業には優秀な女性人材が集まりやすく、中長期的な視点では人材獲得を含め企業価値向上、新たな視点でのビジネスモデル化などの競争優位性が得られるという主張も、経済学者・経営学者や働く女性の視点では正しいのかも知れません。一方、同じような能力をもち将来性を期待されている男性従業員にとっては、昇格チャンスが減少することになりモチベーション維持へマイナスに作用することも考えられます。しかし、ダイバシティなどでデメリットを上回る企業成長・持続性が得られるとされ、かつ存在を無視できないグループになるための分岐点である30%クリティカル・マス(Critical Mass)ラインを越えれば、新たな気付きや成長・持続の原動力といったメリットも得られると感じます。
「鶏が先か卵が先か(a chicken or egg situation)」ということより、まずは公平感のある人事制度設計・運用を検討すべきだと思います。