オフィス鴻

少子化と大学移転

2024年05月08日

以前のブログに大学の統廃合問題について記載しましたが、今回は地域経済に与える影響について触れたいと思います。地方経済にとって数百人から数千人規模の大学移転や新設は、大学があることで周辺には学生街や商業施設などの経済圏が形成され、地元の商品購買、住宅施設、税収など多岐にわたって大きな経済効果をもたらしますが、少子化の影響で学生を確保するため有名大学でも都心回帰の動きが盛んになっていることは既知の通りです。

1960年頃まで、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学等はいわゆる山手線の内側エリア(都心部)、京都大学や同志社大学等は関西圏の一等地エリアに位置していました。しかし、「工場等制限法(2002年に製造業の海外移転増加により廃止)」により大学の施設新設・増設に制限がされたため、戦後のベビーブーム世代を大学が受け入れるために各大学とも定員を増やしたため、多くの大学は一般教養・教育を対象とした1、2年生向けののキャンパスと、専門教育を行う3、4年生のキャンパスに分ける必要が生じたと言います。その後、1990年代あたりから大学設置基準大綱により学年に関係なく教養科目も専門科目を学べるようになってきました。地方から東京の大学へ進学することは一種のステータスでしたが、実際に郊外キャンパスは「東京」や「国際」の名は冠していても、実際には都心から1時間以上かかる周辺地域へと新しい学部を中心にキャンパスが作られていきました。

また、法曹人口の増加と司法試験制度改革として2004年から法科大学院(ロースクール)が開校され、社会人等は勤務先と法科大学院の物理的距離や時間短縮等(アクセスの良さ)の観点から都心に近いキャンパスを希望します。その後、この司法改革がさまざまな困難や矛盾を引き起こすことになるのですがここでは割愛します。また、編集人も臨時講義をしていた大学院施設ではカフェ、食堂(レストランとほとんど変わらない)、郵便局(金融機関)、保育所などが併設されるなど、大学経営自体の戦略化・差別化も大きく変化しています。