オフィス鴻

2024年度診療報酬改定

2024年02月01日

厚生労働省の資料では、2022年度の医療費総額は高齢者の医療機関受診件数増加を主要因として約46兆円に上っているとあり、日本の国民皆保険制度は1961年にスタートしましたが、その後多くの改正を経て現在に至っています。その制度維持の根幹となるのは国民が納める健康保険料と税金であり、2年に1回の診療報酬改定(厚生労働省の諮問機関として中央社会保険医療協議会で議論される)では医師の人件費・技術料等の本体部分に関する医療行為点数(1点10円)と毎年行われる薬価改定があり、ともに全国一律の公定価格となっています。直近10年程は診療報酬の本体部分がプラス改定、薬価部分がマイナス改定の傾向にあります。

また、医療関係者(特に医師)の過重労働が問題視されていることを受け、日本医師会を中心に賃上げ・物価上昇などを理由に診療報酬の増額(プラス改定)を求めていますが、2024年度の税収予算は約70兆円、赤字国債は30兆円以上発行される見通しです。一方でコロナ禍では医療機関の不正請求や診療拒否が相次いで発覚しており、その総括や処理・処分も十分に行われていない状況下で、さらに国民の自己負担分や健康保険料負担増加などに直接的に関係する今回の診療報酬改定は現役世代の将来性担保と負担増回避を十分に検討した上で決定して頂きたいと思います。

その他、貝原益軒の養生訓には「医は仁術なり。(中略)萬民の生死をつかさどる術なれば、医を民の司命という、きわめて大事の職分なり」とある一方で、「医は算術なり」と揶揄されるような医療機関(不必要な外来診療や検査など)も一定数存在することも事実です。どんな患者にも適切な診療を公平に提供し、病気治療にとどまらない思いやりを持った医療関係者・機関には何らかのインセンティヴが与えられ、逆に不要な拝金主義的な医療事業者や患者のモラル欠如(梯子通院、処方薬の不適切使用など)ペナルティーを課すことも併せて検討するなど、今後の行政や政治の方向性を左右する大きな転換点になるような議論が行われることを期待しして止みません。